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SCORM vs 独自仕様

SCORMは、国際規格ですが独自の仕様を持ったLMSも多く存在します。ここでは独自形式について考えてみます。独習型LMSの学習コンテンツの仕様は、大きく2つに分かれます。

  • SCORM準拠
  • 独自仕様(SCORM以外)

そして組み合わせにより3つに分かれるでしょう。

  • SCORMのみサポート
  • 独自仕様のみサポート
  • SCORM・独自仕様、両方サポート

独自仕様とは、SCORMとは違う学習コンテンツ・学習管理の方式を採用したもので、学習コンテンツの一部がシステムに依存しているものなどがあります。

例えば、Youtubeの動画プレーヤは動的生成のため、映像ファイルごとにファイルは存在していません。映像ファイルは、システム側の動画プレイヤーに載ることで、コンテンツとして成立します。学習コンテンツで言えば、下のような関係が成り立つでしょう。

学習素材 + システム側の生成コンテンツ = 学習コンテンツ

学習コンテンツとして、重複する部分をシステム側が自動生成することで、制作負担を下げることができます。

SCORMの扱いづらさ

LMSの最低限の機能は、意外と単純です。ちょっとしたプログラマなら自力で設計できるでしょう。

  • 学習者の管理
  • 学習コンテンツの登録・管理
  • 学習者に教材を提示
  • 学習履歴の取得・管理

LMSが、SCORMを採用したくない理由を挙げるとすれば、

  • SCORMでは役不足で目的を達成できない、規格が足かせとなる
  • 利用する機能のみ実装したい
  • 規格が難読である

などなど

SCORMを採用することは、他人が作ったルールに従うという意味です。身動きがしづらくなる可能性があり、こんな機能を追加したいけど、SCORMではできないといったことが起こります。

また、自前でLMS、学習コンテンツを開発する場合、相互運用性を不要とすれば、SCORMに準じる必要はなくなります。必要な機能のみ実装すればよくなりますから、無理してSCORMに準拠してLMSを作っても、ほとんど使わない機能ばかりだと、労力の無駄となってしまいます。

そのため、不要な機能を実装しない、開発負担を下げる、そして、SCORMに無いような機能を実装できることを考えて、あえてSCORMに準拠しないという考え方も納得できます。SCORMを採用するか・しないかは、目的を明確にすることが重要になってきます。

私個人としては、SCORMはただの道具の1つという位置づけです。なにがなんでもSCORMという発想は持っていません。不要であれば採用しませんし、学習形態の1つその程度です。

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SCORMの学習画面の構成

SCORMの学習画面の構成

LMSの学習画面は、つぎの3つから構成されます。

  • ナビゲーション
  • 目次(コンテンツ構造)
  • 学習ページ



ナビゲーション

ナビゲーションとは、学習の前後ページ移動や学習終了などのボタンが配置されます。「前へ」「次へ」「終了」「教材終了」「中断」などボタンが付いています(文言はLMSによってさまざまです)。またLMSによっては、SCORM関係なく独自のボタン(「デバック」ボタンなど)が付いているものもあります。

目次(コンテンツ構造)

学習コンテンツは、章節項目といったツリー階層の構造を持つことができます。そのコンテンツ構造を表示したものが目次になります。各目次の項目は、学習ページに対応して、学習完了、学習習得を判定する単位となります。

学習コンテンツ

SCORMの学習コンテンツは、HTMLファイルから構成されます。一般的なホームページとの違いは、2つあります。

  • LMSと通信することができる。
  • 学習コンテンツの構造や目次を作るためのXML形式の設定ファイル(マニフェストファイル)が必要。

特別なスクリプトをHTMLの中に書いたものだけがLMSと通信ができます。とくに通信する必要がない場合は、普通のHTMLでも動作します。ただし、マニフェストファイルは必ず作らなければならないため、ちょっと手間がかかる部分でもあります。

学習コンテンツのパターン

SCORMの学習コンテンツは、大きく2つに分かれるようです。

  • シングルSCO
  • 1つの項目にFlash学習コンテンツを表示させて、Flashの中で画面遷移が行われるもの。そのためLMSが管理する項目は1のみとなります。SCORMの教材作成ツールは、シングルSCOで書き出すものが多いです。

  • マルチSCO
  • 複数の項目で構成されます。ナビゲーションによって学習ページの移動ができ、各項目のページ単位で学習履歴の把握、学習ページの制御(シーケンシング)を行うことができます。

学習管理において、シングルSCOとマルチSCOは大きな違いがあります。LMSは、目次の項目単位で学習をしたかどうを判断します。そのため、シングルSCOの中にFlashのページが10ページあったとしても、項目は1つとして判断されます。その1つだけで学習判断をして良いのか、考える必要はあるでしょう。

LMSの学習画面いろいろ

  • SCORM2004学習エンジン SCORM1.2、2004対応

  • ilias SCORM1.2、2004対応

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SCORMの学習判定

学習コンテンツの構造

SCORMの学習コンテンツは、本の目次と同じような階層構造(章節項)を持つことができます。それぞれの項目に対して、学習ページが対応して、通常、ページをめくるようにリニアに進んでいきます。



LMSの学習判断

LMSは、学習者が学習コンテンツを学習したかどうかを判断します。LMSが何をもって学習と判断するかは、教材を設計するうえで重要なことでしょう。

SCORMでは、学習したことを識別するフラグとして、SCORM1.2では「学習完了」、SCORM2004では「学習完了」「学習習得」の2つを持ちます。学習者が1つのコースウェアを学習したかどうかは、学習の進み具合よって決定されます。※シンプルに考えば、全部学習したら、1つのコースウェアは学習したと言っていいでしょう。

SCORMの学習コンテンツは、このような「学習完了」や「学習習得」のフラグを立てることで、そのコースウェアを学習したかどうかを判断します。つまり、機械的にみれば学習のゴールとは、フラグを立たせることになります。

本来ならば、学習者は、学習内容を理解したうえで学習を終えることが正しい流れですが、学習内容を理解せずとも、フラグを立たせればいいというスタンスであっても、LMSはその学習者に対して、ちゃんと学習したと判断をするでしょう。

SCORMのような独習型のeラーニングでは、学習者がずるをしたかどうかまでは分かりません。このことをよくeラーニングのデメリットと言う人がいますが、eラーニング特有のデメリットではありません。学校の宿題を、知り合いみんなで解いて提出するようなものと一緒です。きちんと厳格に実施するには、プロメトリックのようなテストセンターを利用したCBT(Computer Based Testing)が必要になるでしょう。

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LMSとデータベースの移行

データベースのLMS依存

SCORMは、さまざまなLMSで同一の学習コンテンツを動かすことができます。それを相互運用性といい、LMS依存を無くすSCORMのメリットとされています。

ここで少し考えてみてください。これでLMS依存がなくなったと言えるのでしょうか。学習コンテンツを作る立場からすれば、無くなったと言えるかもしれませんが、LMSを運用する立場の人は、SCORMに対応しているLMSだからといって、ほいほい別のLMSに移行することは可能でしょうか。既に運用フェーズに入っている場合、データベース上のデータを移行できるかは、大きな問題になるでしょう。

SCORMは学習データの記録形式を問わない

SCORMの規格は、LMSと学習コンテンツとの間にルールをもうけたものです。規格に沿っていれば、LMSはどのようなプログラム言語、データベースで作られていても構いません。A社 LMSからB社 LMSに移行するさい、学習コンテンツは、移行できるかもしれませんが、データベースに格納されている学習進捗などの学習データは移行できるでしょうか?

もし方法論を考えれば2つあります。

  • LMSには、学習データのエクスポート機能が付いていて、それを利用する。
  • LMSのデータベースを調査し必要なデータを抽出する。

どちらも、頼りない方法論ですね。LMSにエクスポート機能が付いていなければ、CSVファイルなどに落とすことはできません。そして、ベンターが設計したデータベースのテーブルを調査することなんて、あまりしたくないですよね。そもそも、データベースがアプリケーションに組み込みDBであったり、クラウド利用でのLMSは、データベースそのもの見ることはできないでしょう。移行先のLMSも同じようにインポート機能が付いているか問題になります。

このことから、SCORMに対応したLMSであっても、LMS間の学習データの移行は、非常にやっかいです。オープンソースLMSなら、ちょっと挑戦してみようという気も起きるかもしれませんが、移行元、移行先のLMSに対して移行可能かどうかを見極める必要があるでしょう。

視点の違いからSCORMは、次のことが言えるでしょう。

  • コンテンツ視点 – さまざまなLMSで動作することがメリットとなる。SCORMと言えばコンテンツ視点が多い。
  • 運用視点 – SCORMだからといっても、データベース上の学習データが移行できなければ、メリットはあまり感じられない。

LMSの移行(引越し)は、コンテンツだけ移行できても不十分です。データベースに登録された学習者、受講履歴などを「どうするのか?」考える必要があります。

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標準規格と互換性の問題

標準規格

SCORMの規格はADL(Advanced Distributed Learning)という組織が規格を定めています。HTML、CSSでいう所のW3C(World Wide Web Consortium)みたいな感じです。

現在、利用されているSCORMは、SCORM1.2とSCORM2004の2つがあります。SCORM1.2は、2001年に策定され、2004年にSCORM2004ができました。その後、SCORM2004は、仕様の明確化、機能追加を目的として3回アップデートされました。現在の最新のバージョンは、2009年にリリースされた、SCORM 2004 (4th Edition)になります。

2000 SCORM Version 1.0
2001 SCORM Version 1.1
2001 SCORM Version 1.2
2004 SCORM 2004 (1st Edition)
2004 SCORM 2004 (2nd Edition)
2006 SCORM 2004 (3rd Edition)
2009 SCORM 2004 (4th Edition)

(参考 wikipedia.org)

ベンダーLMSのなかには、「SCORM対応」と謳っていながら、型落ちの古い規格 SCORM1.2しかサポートしていないものがあります。SCORMに対応したLMSを採用するときは、SCORM1.2で十分なのかSCORM2004も必要なのか考慮する必要があります。

互換性の問題

SCORMには、HTMLやCSSと同じような問題を抱えています。Webデザイナーなら一度は経験していると思いますが、ブラウザによって見栄えがちょっと違ったり、また、サポートされていないタグが存在します。これは、W3Cが、HTML/CSSの仕様を作っても、実装するのはブラウザメーカーに任されているためです。実は、SCORMでも同じようなことが言えます。

SCORMの場合、HTML/CSSのような構造・見栄えの問題ではなく、LMSが学習コンテンツを認識しなかったり、文字化けが起きるなど、期待通りに動いてくれない問題です。
またSCORM1.2は、準拠レベルというものがあり、いくらSCORM対応LMSといっても、準拠レベルが異なれば、ほかのLMSに学習コンテンツを移植するさい動作しない場合があります。HTMLでいうところの、サポートされているタグが異なるケースです。SCORM2004では準拠レベルというものはありませんが、1st~4th Editionのマイナーバージョンアップによる機能の違いがでてきます。

現在は存在するか把握してませんが、昔のSCORM準拠のLMSは、もともとは独自仕様のLMSを改良してSCORMに対応したものがありました。そのため、学習コンテンツを登録すると、独自仕様のルールに自動変換されたものがあったそうです。

このようにみると、相互運用性を犠牲にした独自仕様と、相互運用性を保つものの互換性にやや不安が残るSCORM準拠、どちらがいいのか分からなくなってきます。聞いた話では、SCORM2004では、10個ぐらいのLMSに対して、同一の学習コンテンツを載せたら、8つ程度は、一発で動作したという話を聞いたことがあります。SCORM1.2に比べれば、SCORM2004は大きなトラブルが起きる可能性は、少なくなっているようです。

また、コンテンツ制作者の頭の痛いところは、HTMLを作る場合、手元にさまざまなブラウザをネットから無償でダウンロードできるので、動作確認をすることは容易ですが、LMSの場合は、有料なものも多くあるため、制作会社は、手元で動作確認ができない場合があります。「規格どうりに作ったはずなんだけど・・・動かない。。」というケースもあるでしょう。そのため事前に、利用されているLMSの動作を確認するなど必要がでてくるかもしれません。

こういった状況があるため、日本では日本イーラーニングコンソシアムが、LMSや学習コンテンツに対して、認証制度を設けています。テストケースに合格した認証済み学習コンテンツは、認証済みLMSに対して動作する可能性は高く、オレオレSCORM対応したLMSや学習コンテンツがあるなか、ベンダーにとって、顧客に対して安心感を与える一つのアピールに繋がっているようです。

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SCORMとは

LMSを利用する機会があったら、そのシステムがSCORMに対応しているか一度確認してみるといいでしょう。そこでSCORMを利用すべきかどうか、検討することをおすすめいたします。

SCORM(Sharable Content Object Reference Model)とは、さまざまなLMSに同一の学習コンテンツを動作させるための国際標準規格です。


どいういうこと?

たとえば、LMSをパソコンのOSに例えて考えてみましょう。OSには、Windows、MacOSなどあります。学習コンテンツは、OS上に動作するアプリケーションだと考えてください。

通常、Windows用に作られたアプリケーションは、Windowsでしか動作しません。ソフトウェアメーカーは、Windows、MacOS上で動かしたい場合、それぞれのOS専用に作り、Windowsアプリケーションは、MacOSにインストールすることはできません。これは、LMSでも同じことがいえます。A社 LMS用に作られた学習コンテンツは、B社、C社のLMSでは基本的に動作しません。

昔のLMS(いまでもありますが)、独自の教材仕様を持っているところが多くありました。そのためLMS依存のような状況が発生し、困ったことがでてきました。

  • LMSの運用現場では、別のLMSに変更することは学習コンテンツを作り直さないといけない。
  • 教材販売を行うコンテンツ屋さんは、複数のLMS用にコンテンツを作る必要があり、負担が大きい。
  • LMSベンダーも自分のLMSで動く教材を増やすためには、コストをかけないと増えていかない

どうすればいい?

パソコンでも、1つのアプリケーションを複数のOS上で動作させることは、実は可能です。JavaやFlashなどがそうです。これらは、OSとアプリケーションの中間に入ってOS依存をなくすものです。LMSの場合は、SCORMがその役割を果たします。SCORMは、LMSとコンテンツの間に入りフレームワークとして機能します。SCORMに対応した学習コンテンツを作ることでLMS依存を無くすことができます。当然、LMSもSCORMに対応している必要があります。

このように、複数のLMS間で共通のコンテンツを動かすことができることを、相互運用性と言います。SCORMを知るうえで、まず一番に知って欲しい重要な事項になります。

SCORM1.2概要

SCOとアセット

LMS の要求から起動される学習コンテンツは、SCO(えすしーおー、すこ)とアセットに分けることができます。用途に応じて使い分けを行います。

SCOとアセットの違い

SCOとは
Shareable Content Object(共有可能なコンテンツ)の略称で、SCOは、LMSのランタイム環境に対してアクセスできるHTMLファイルを指します。ランタイム環境は、完了状態、合格状態などを設定できるデータモデル(機能)を提供します。SCOは、これらのデータモデルに自由にアクセスでき、JavaScriptを用いて利用することができます。LMSが一度に起動できるSCOは1つのみで、複数一度に起動することはできません。

また、本来 SCO単位で教材を共有し、利用できそうなSCOを再利用して教材開発負担を下げようという原理主義的な規格意図がありますが、動けばいいという意味合いでは、あまり意識されていないようです。

アセットとは
ランタイム環境に対してアクセスを行わないファイル。つまりSCO以外のファイルがすべてアセットです。HTML、画像、動画、XMLファイルなどのコンテンツを構成するファイルがアセットだと言えます。

アセットはSCORM特有の用語ではなく一般的なオーサリング用語として、コンテンツファイルのことをアセットと呼んだりします。