標準規格と互換性の問題

標準規格

SCORMの規格はADL(Advanced Distributed Learning)という組織が規格を定めています。HTML、CSSでいう所のW3C(World Wide Web Consortium)みたいな感じです。

現在、利用されているSCORMは、SCORM1.2とSCORM2004の2つがあります。SCORM1.2は、2001年に策定され、2004年にSCORM2004ができました。その後、SCORM2004は、仕様の明確化、機能追加を目的として3回アップデートされました。現在の最新のバージョンは、2009年にリリースされた、SCORM 2004 (4th Edition)になります。

2000 SCORM Version 1.0
2001 SCORM Version 1.1
2001 SCORM Version 1.2
2004 SCORM 2004 (1st Edition)
2004 SCORM 2004 (2nd Edition)
2006 SCORM 2004 (3rd Edition)
2009 SCORM 2004 (4th Edition)

(参考 wikipedia.org)

ベンダーLMSのなかには、「SCORM対応」と謳っていながら、型落ちの古い規格 SCORM1.2しかサポートしていないものがあります。SCORMに対応したLMSを採用するときは、SCORM1.2で十分なのかSCORM2004も必要なのか考慮する必要があります。

互換性の問題

SCORMには、HTMLやCSSと同じような問題を抱えています。Webデザイナーなら一度は経験していると思いますが、ブラウザによって見栄えがちょっと違ったり、また、サポートされていないタグが存在します。これは、W3Cが、HTML/CSSの仕様を作っても、実装するのはブラウザメーカーに任されているためです。実は、SCORMでも同じようなことが言えます。

SCORMの場合、HTML/CSSのような構造・見栄えの問題ではなく、LMSが学習コンテンツを認識しなかったり、文字化けが起きるなど、期待通りに動いてくれない問題です。
またSCORM1.2は、準拠レベルというものがあり、いくらSCORM対応LMSといっても、準拠レベルが異なれば、ほかのLMSに学習コンテンツを移植するさい動作しない場合があります。HTMLでいうところの、サポートされているタグが異なるケースです。SCORM2004では準拠レベルというものはありませんが、1st~4th Editionのマイナーバージョンアップによる機能の違いがでてきます。

現在は存在するか把握してませんが、昔のSCORM準拠のLMSは、もともとは独自仕様のLMSを改良してSCORMに対応したものがありました。そのため、学習コンテンツを登録すると、独自仕様のルールに自動変換されたものがあったそうです。

このようにみると、相互運用性を犠牲にした独自仕様と、相互運用性を保つものの互換性にやや不安が残るSCORM準拠、どちらがいいのか分からなくなってきます。聞いた話では、SCORM2004では、10個ぐらいのLMSに対して、同一の学習コンテンツを載せたら、8つ程度は、一発で動作したという話を聞いたことがあります。SCORM1.2に比べれば、SCORM2004は大きなトラブルが起きる可能性は、少なくなっているようです。

また、コンテンツ制作者の頭の痛いところは、HTMLを作る場合、手元にさまざまなブラウザをネットから無償でダウンロードできるので、動作確認をすることは容易ですが、LMSの場合は、有料なものも多くあるため、制作会社は、手元で動作確認ができない場合があります。「規格どうりに作ったはずなんだけど・・・動かない。。」というケースもあるでしょう。そのため事前に、利用されているLMSの動作を確認するなど必要がでてくるかもしれません。

こういった状況があるため、日本では日本イーラーニングコンソシアムが、LMSや学習コンテンツに対して、認証制度を設けています。テストケースに合格した認証済み学習コンテンツは、認証済みLMSに対して動作する可能性は高く、オレオレSCORM対応したLMSや学習コンテンツがあるなか、ベンダーにとって、顧客に対して安心感を与える一つのアピールに繋がっているようです。