第3レイヤー : データを開放する

 今までに、SCORMのデータが、どこかのブラックホールに入り消えてしまったと、思うことはなかったでしょうか?。SCORMは、とにかくLMSにデータを送ることが仕事でした。LMSが、それをどのようにデータを利用しようと、表示しようと、レポートしようと、規定はありません。Tin Canも、そのようなシステム上の規定はありませんが、決定的に違うことがあります。それは Tin Can は、LRSのデータにアクセスできることを要求している点です。

 そのため Tin Can API は、LRSへのデータ書き込み・読み取りの双方が可能です。書き込みしたものは、読み取ることができるのです。LRSは、レポーティング・ツールや分析ツール、また他のLRSとの間でデータのやり取りができます。この機能は、自身で構築するシステムをどうするか、共有データをどうするかといったシステム構成に、重要な意味を持ってきます。

 LMSのレポーティング・ツールに満足している人は、まずいないでしょう。一般的なレポートでも、十分な場合もありますが、別の方法でデータを細分化したり分けたくなるときもあります。業界が異なれば、ニーズも異なり、用いる用語、順守すべき要件も変わってきます。Tin Can APIなら、どのようなLRSからもデータを引き出せるため、高度なレポーティング・ツールを開発することが可能です。これらのツールは、特定のビジネスインテリジェンスツール向けであったり、さまざまな種類の学習体験、異なる業界向けなど、カスタマイズすることが可能なのです。データはアクセス可能なので、好きな方法で分析することができます。

 コンテンツの作成者は、教育効果を評価し、欠点に対処して、そして改善策を講じる手段を常に模索してきました。改善すべき部分を見つける唯一の方法は、学習者がコンテンツ自体にどのような関わり方をしているか理解することです。実際、何が起こっているのかを理解しなければ、作成者には、不備のある箇所が見えてきません。Tin Canは、コンテンツの分析ツールにより、LRSから実際の利用データを抽出し、情報に基づいた判断を行い、インストラクショナル効果をより上げるために、作成者に必要な情報を提供することができます。

 システム間の通信に加え、Tin Can APIは、一つ以上のLRSに対して、ステートメントをレポートすることが可能です。LMSと学習体験との間には緊密な相互依存関係がないため、学習体験の情報伝達は、制約なく複数のLRSにステートメントを自由に送ることが可能です。

 マルチLRSのレポート機能で、もっとも興味深い使い方は、「パーソナルデータロッカー(学習者個人が所有するクラウド上のストレージ)」の活用です。学習者が一つのトレーニングを受ける時、なぜ学習体験は、雇用者のLRSだけに記録されてしまうのでしょうか?。その学習体験は、他の事柄や今後の仕事に関連することはないでしょうか?なぜ、その学習体験は、学習者に帰属されないのでしょう?Tin Canを使えば、学習者は学習体験を雇用者にレポートするだけでなく、同時にこのイベントを「パーソナルデータロッカー」に記録することができます。

 論理的に次の思考を考えると、なぜ学習体験は、一番に学習者の「パーソナルデータロッカー」に記録されないのでしょう?まずは、学習者に自身のデータを所有させて、そして次に、そのデータを共有する相手を決めてみては。

 学習体験の記録は、履歴書よりもその人の経験を多く語ることになりませんか?

 学習体験を公開することで、助言、質問、仕事さえも求められたり、特定の分野で専門家であることを知ってもらうのに役に立ちませんか?

 あなたの組織は、その仕事についてだけでなく、一個人として学んだこと全てを知ることで、利益になりませんか?

 このビジョンを達成するには、さまざまな課題を乗り越えなくてはなりません(技術的にも制度的にも)。しかし、Tin Canは、こうした課題全てを克服して、それ以上を達成するための基盤となるでしょう。


 少し驚きましたか?潜在的に持つ変化の可能性に?Tin Canは、今後 産業を再形成するでしょう。しかし、もちろん、それだけではありません…


※ この記事は、CC BY 3.0のもと、tincanapi.com のLayer 3: Free the Dataを翻訳したものです。意訳のため正確さを求める場合、原文を読んでください。
(原文) http://tincanapi.com/layer-3-free-the-data/